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ルビコンの決断『奇蹟のリンゴ』は面白かった

録画していた『ルビコンの決断』を観たが、なんというか凄まじい内容であった。これは良い話なのか?

始めに書いておくが、僕は農薬などの化学物質にわりかし寛容で、量さえ守れば農薬を使っても何ら問題ないと考えている。

奇蹟のリンゴ

一般にリンゴは害虫や伝染病の被害を被りやすいため、栽培→収穫までには農薬が不可欠である。一方で今回の主役である青森のリンゴ農家、木村秋則氏は農薬を使わずにリンゴを栽培することができる(らしい)。
ゆえにそのリンゴは『奇蹟のリンゴ』と呼ばれ、ネット販売では25分(!)で完売するほど人気である。僕も『奇蹟のリンゴ』という話自体は聞いたことがあり、たぶん有名である。

ここから↓は番組のまとめ&感想(うろおぼえ)。

木村さん、無農薬に目覚める

木村さんは中学の同級生の奥さんと結婚して青森のリンゴ農家に婿養子として入る。ちなみに木村さんの実家も農家だ。
リンゴ栽培にも慣れたある日、農薬散布を終えた木村さんは奥さんの手が農薬にかぶれていることに気づく。何とかしてあげたい木村さんは無農薬栽培ができないか、と考えるようになった。しかしリンゴの無農薬栽培は前代未聞であり、リンゴ農家の先輩である義父にも反対される。
そこで、とりあえず年10回の農薬散布を5回に減らしてみることにした。結果、収穫量はほとんど変わらず、むしろ農薬を買うお金を節約することができた。翌年は3回、さらに翌年には1回と減らしていくと、さすがに収穫量は減っていたようであるが、農薬を買うコストを考えると利益はさほど減らなかったようである。

無農薬栽培をやってみるが・・・

年1回まで減らした翌年、ついに無農薬栽培に挑戦することになった木村さん。とはいえリスクがでかいので4つの畑のうち、1つだけ無農薬でやってみることにした。こう言っては何だが、このあたりまでの木村さんはかなりまともである。

無農薬の畑の結果は・・・(TVの前の皆さんの予想通り)全滅。
絶望した!という暇もなく、さらなる不運が襲い掛かる。なんと、あまりにも早くリンゴが枯れてしまったため木が勘違いして冬(秋だったっけ?)に再び花が咲いてしまったのだ。これで畑を翌年も使うことはできなくなってしまった。

不屈の男・木村

3つしか畑を使えない木村さんだったが、翌年も無農薬栽培を継続することにした。農薬を使わないと当然ムシが付くので、一家総出の手作業で取り除き木を守る。
しかし苦労の甲斐なく畑は全滅。凡人の僕などは、このあたりが潮時じゃないのと思うのだが木村さんは止まらない。
この後も毎年連続で無農薬栽培に挑戦しては失敗というループを繰り返すことになる。

一家は困窮、しかし諦めない

リンゴ農家である木村家の収入源はもちろんリンゴであるのだが、この間の数年は全く収穫が無い状態が続いていた。当然、一家は貧乏生活を強いられ、例えばおかずがタクアンのみだったり、雑草の入ったおかゆだったりと日本中が浮かれていたバブル期と思えないほどの食事であったらしい。
娘が3人いた木村さんは東京に出稼ぎに行ったり、実家からコッソリ援助してもらったりしてどうにか生活をしていたようだ。

近隣農家からの圧力、そして父激怒

いつまでたってもリンゴを収穫できない木村さんを心配していた近所の農家であったが、次第に風当たりは強くなっていった。とはいえ、害虫天国の無農薬リンゴ畑が近隣も被害を与える可能性もあると考えると仕方ない面もある。農薬散布されそうになってキレたり、害虫を威嚇する木村さんは危険人物に見えなくもない。
状況が好転することもなく、義父が年金を担保に借金をするかという話も出てくる中、ついに実家の父が激怒する。『農薬でも何でもつかってリンゴを獲れ!農業を舐めるな!』という父上の言い分はごもっともと思うのだが、なぜか木村さんは考えを改めない。何が彼をここまで駆り立てるのだろうか?
食える手段があるのに進んで貧乏している辺りは頑固すぎて理解しがたいものがあり、これがいわゆる『引っ込みがつかない状態』なのかな、と思ったりした。ちょっと宗教じみてるよな。

結実

娘の給食費を払えないような状態になり絶望した木村さんは自殺を考え、ロープを持って森へ入る。そこで、ハタと気付くのだ。なぜウチのリンゴは枯れるのに、森の木は枯れないんだ?と。森の土は微生物が多く、畑の土と違う!と思った木村さんは畑の土を改良することにする。また、畑に雑草を茂らせ、害虫の天敵を住まわせることを考えたのだった。無農薬栽培を始めて8年目のことであった。
結論から言えば、この発想で10年目についにリンゴは実り、翌年からも収穫できるようになった。おめでとう。正直、木村さんが諦めなかったこと自体が僕には奇蹟的に思えた。

ちなみに現在の栽培シーンで防虫のため酢を捲いている場面で、『酢は現行では農薬です』みたいなテロップが出ていて、アレ?これって無農薬じゃないん・・・と思ったが(たしか『特定農薬』ってヤツになるんだったっけ?)。ま、いっか。

補足

木村さんが無農薬を始めたのは40年くらい前で、現在は作物に長期で残留するような農薬はそもそも使われていない。
今回の放送は意図していないにせよ、『農薬=危険』というイメージを惹起しかねないが、用法、用量を守れば便利で安全なものであるし、その恩恵を我々は受けていることを付け加えておきたい。

最後にamazonでの木村さんの本へのレビューを引用させてもらい、〆とする↓

日本は古来より土作りを基本とした農業を営んできた、それは既成概念ではなく、知恵である。
無肥料、それは自然からの一方的な搾取で、やがては枯れる。
今は流行りのオーガニック、搾取である。
商業的な搾取は、枯渇を招く。

農薬の使用は本当に思考停止か、農薬は悪か?
自然農法を気取って病害虫の発生源となり、自分の家庭ばかりか、周囲一帯の農家をも巻き込んで産地全体のダメージとなった場合、その責任は取れるのだろうか。
うかつな事はするものではない。

エコだとかロハスだとか、きれいに着飾った言葉でだまされている人が多く感じられる。
『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録』のレビュー